白内障手術って、
どんな手術なの?
手術の概要
白内障の手術は、カメラで例えるとレンズ交換をすることに該当します。具体的には、濁った水晶体を取り除き、代わりに人工のレンズ(眼内レンズ)を眼の中に挿入します。それだけを聞くと大変そうな手術に感じられるかもしれませんが、手術の技術向上や機器の進歩によって、短時間での手術が可能になっており、日帰りで手術を受ける人も多くいます。
何歳で手術を受ける人が
多いの?
- ※水晶体再建術(眼内レンズを入れる場合のみ)件数
- ※レセプト情報・特定健診等情報データベースより集計
- 出典:厚生労働省平成29年 社会医療診療行為別統計
日帰りで手術をした人は、
入院の約3倍!
- ※外来および入院の水晶体再建術
(眼内レンズを入れる場合のみ) - 件数(平成28年4⽉〜平成29年3⽉診療分)
- 出典:厚生労働省 第3回NDBオープンデータ(作図)
技術の進歩により患者さんの負担が少なくなったため、以前は術後の安静が必要だった白内障手術が、今では多くの医療機関で日帰りで実施されるようになっています。
手術の手順
ここでは、超音波で水晶体を取り除く方法をご紹介します。ほとんどの白内障手術では、この方法が採用されています。※眼の状態によっては、異なる方法になる場合があります。
麻酔をかける
ほとんどの白内障手術は点眼麻酔。麻酔によって手術中はほとんど痛みを感じません。
眼内レンズを
入れる穴を作る
水晶体を包む袋(水晶体嚢)の前面に丸く切れ目を入れます。精密な作業のため、顕微鏡で手元を見ながら行います。施設によっては、この作業をレーザーを用いて行うことがあります。
濁った水晶体を取り除く
水晶体嚢の切れ目から器具を入れ、超音波で水晶体を砕きながら吸引して取り除きます。
眼内レンズを入れる
空になった水晶体嚢の中に眼内レンズを入れ、固定します。
動画でわかる! 手術の手順
局部麻酔を使うので、痛みの心配はありません。安心して大丈夫ですよ。
手術前
〜当日の流れ例:【正午から手術を行う場合】
白内障手術は、実際にはどのような流れで行われるのでしょうか。代表的な例をご紹介します。
※病院によって流れは異なります。詳しくは、手術をする医療機関にご確認ください。
手術前日に注意すること
- 髪を洗っておく
- 手術当日の洗髪はできません。
- 来院および帰宅の手段を確認しておく
- 患者さん自身で自動車や自転車を運転するのは、控えたほうがよいでしょう。
- マニキュアやネイルアートをしている場合は落としておく マニキュアやネイルアートをしていると、
手術中に血中の酸素量をうまく測定できない場合があります。
当日の朝注意すること
- 男性は頬ひげをそり、
女性は化粧を控える - 手術後はしばらく洗顔ができなくなります。
- 前開きの服を選び、
高価な服装は避ける - 手術後は眼帯をしたまま着替えるため、前開きの服が便利です。
また消毒液などで衣服が汚れてしまう可能性があるので、
汚れては困る高価な服などは避けましょう。 - 食事は手術の3時間前までに、
飲水は2時間前までに済ませておく
来院後
〜手術開始までの流れ
指定の来院時刻は医療機関によって異なりますので、担当医に確認してください。
- ご来院
- 所定の時刻までに病院に到着し受付を済ませます。手術中に誤って飲み込んでしまう恐れがあるので、入れ歯、差し歯をしている場合は外しましょう。消毒液などでぬれてしまう可能性があるので、補聴器をしている場合は外し、聞こえの具合を確認しておきます。
- 散瞳処理
- 点眼薬によって瞳を大きく広げます。
- 前室へ移動
- 手術中の尿意は合併症を起こすリスクとなる可能性があるので、必ずトイレは済ませておきましょう。手術用のエプロンや帽子を着けて準備を整えます。
- 手術開始
- 手術室に入り、氏名や病名、手術内容などを確認します。消毒、洗眼を行い、手術を開始します。
帰宅後注意すること
- 手術した眼は安静、清潔にする
- 手術後のトラブルを予防するため、叩いたりこすったりはしないようにします。
また目薬は指示どおりに差します。術後はしばらく洗顔ができなくなります。 - 急激な視力低下に注意する
- 術後眼内炎を発症した可能性があるので、
見え方に変化がある場合は医療機関に速やかに連絡します。 - 手術後1週間は洗顔・洗髪を控える
-
術後の感染症予防のためです。固く絞ったタオルで顔を拭くことはできますが、
洗顔や洗髪は医師の許可がおりてからにしましょう。 - 手術後1週間は飲酒・喫煙を控える
- 食事に制限はありませんが、
飲酒や喫煙は目に刺激となる可能性があるので、1週間は控えましょう。
手術についてはもちろん、自宅での注意点なども、
何か不安や気になることがあれば、遠慮せずに聞いてみましょう。
白内障手術の
歴史
白内障の歴史は古く、紀元前にはすでに手術法が確立していたようです。現在の白内障手術は患者さんに負担のない、安全性の高いものですが、そのような手術法が確立するまでには、どのような歴史があったのでしょうか?
- 紀元前
800年はじまりは、インドで
このときの手術法は、眼球に針を刺し、
水晶体を硝子体の中に落下させる「墜下法」というものでした。- 1300年代
日本に紀元前と同じ「墜下法」が伝わります。
- 1700年代
手術法として水晶体を摘出する摘出術が確立しました。
- 1300年代
- 1949年
眼内レンズの誕生
人間で眼内レンズ挿入手術が成功
水晶体を摘出するため術後は眼鏡による矯正が必要という摘出術の課題を受けて、より自然な見え方に近づけるための眼内レンズの開発が始まります。ここから、白内障手術は眼内レンズの挿入が標準となっていきました。
- 1967年
超音波で水晶体を吸引する方法が発案されました。
- 1990年
現在の手術法が標準様式として確立しました。
- 1967年
- 2012年
レーザーを用いた手術へ
メスの代わりにレーザーで手術を行う技術が用いられました。
販売名:LenSx®眼科用レーザー手術装置
医療機器承認番号:22600BZX003500001949年に生まれた眼内レンズも、それから70年を経てどんどん進化しています。複数の距離にピントを合わせた2焦点レンズ、3焦点自然視覚レンズ(3焦点レンズ)といった機能面の充実はもちろん、小さな切開創から挿入できる柔らかい素材の折りたたみ型レンズ、乱視矯正に着目したレンズなど、患者さんの負担をできるだけ抑えるような工夫がされています。
出典:山川.: 久留米医学会雑誌;81:87-93,2018
古くから人々を悩ませてきた白内障。
白内障手術は、近代医学がもたらした恩恵のうちでも、特に大きいものだといえるのではないでしょうか。現在行われている白内障の手術法が確立するまでには、長い歴史があったことがわかりますね。